映画「ヤクザと憲法」を観た

映画『ヤクザと憲法』公式サイト

観たのは結構前なんだけど、忘れないように感想を。暴力団についてもともと興味があり、楽しみにしていた映画。社会的な排除に関する映画だった、と思う。

仕事柄、元暴のひとと関わることもあるし、貧困との関連も肌で感じることが多い。「暴力団」という名前で括られて無条件に排除と差別の対象とされるものの実態を知りたいし、その排除を是とする社会のあり方ってどうなんだろう?とずっと思っていた。

この映画は大阪のある暴力団に密着して撮られたドキュメンタリーだ。モザイクは原則なし。ちゃんと顔を出して話をするヤクザの姿をみることができる。

まだ若い新人(赤の他人)をまるで親子のように面倒を見る組員。暴力や犯罪を美化するつもりはないけど、ヤクザの日常を垣間見ると、彼らも普通の同じ人間であることを感じられる。暴力団が、表の社会で居場所を見つけられなかった、排除された人の受け皿となっている現実が胸に迫る。

暴力団を社会から現在のように法律で取り締まって排除していくことが、正解だとは思えない。社会からドロップアウトしてしまうひとをどうやってまた社会へつなげていけるか、居場所を保障できるか、ということがわたしたちに問われているのだと思う。社会が多様化してドロップアウトの形も多様化しているから、容易に解決できることではないけれど…。指定暴力団とひとくくりにして排除の対象とすることで、地域での居場所や地域とのつながりはさらに少なくなり、犯罪はさらに地に潜っていくことは想像に難くない。

このあたり、監督やプロデューサーの方も色々インタビューで話されているので面白いです。興味ある方はどうぞ。

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余談なのですが、シネマテークでの初回上映を観に行ったら監督とプロデューサーのトークも聞くことができ面白かった。元警察官の人がトークのゲストで来ていたんだけど、トークの中で「暴力団は必要悪だという人もいるが、わたしは暴力団は絶対悪だと思っている」と断言していて、この映画見てそういう結論になるんやー、とシラケてしまったwわたしはこの発言を心底怖いと思ったし、やっぱ警察ってこういうひとがなるんだなーと。。(ちなみに近くの席に座ってた人でこの発言に対して即座に「何言ってんだこの野郎」と小さな声で凄んでるその筋っぽい人がいたのですが、心の中ですごい同意…)。

あと、映画の中で暴力団の部屋に警察が立ち入るシーンがあるんだけど、そこでの警察のカメラへの凄み方がもうどっちがヤクザだよ、っていう柄の悪さで笑えるほどでした。いや、あの感じ知ってるよ。デモとか運動の現場とかで弾圧してくる時の警察とか公安そのもの!すごい既視感だった…。ああいうのが、正義を振りかざして人権ていう概念を踏み潰していく現実が、怖い。